どこまでも、まよいみち

旅人とライオン

昔々。旅人が、森の中で道に迷ってしまいました。そして困ったことに、間もなく日が沈んで、すぐにあたりは真っ暗になってしまいました。旅人は空を見上げました。空にはまんまるの月がぽっかり浮かんでいて、その月の下のほうには、小さな四角い明かりが見えました。四角い明かりは、家の明かりのようでした。

旅人は、あの家まで行ってみることにしました。親切な人なら、泊めてくれるかもしれません。旅人はどんどん歩いて、四角い明かりの小さな家に着きました。旅人はドアをノックして、言いました。
「すみません。道に迷って困っています。どうか、今晩泊めてください。」
すると、
「おはいり。」
と、声がしました。旅人はそっとドアを開けました。家の中にいたのは、大きな椅子に腰かけた、大きな男の人でした。ぼさぼさの髪はまるでライオンのたてがみのようでした。男はにっこり笑うと、
「ようこそ!」
と言いました。男は久しぶりの来客をとても喜び、旅人をあたたかくもてなしました。旅人は、美味しい夕食に舌鼓を打ち、最高のお酒にすっかり良い気分になり、男とのおしゃべりを心から楽しみました。旅人は、この愉快な男をすっかり気に入ってしまいました。やがて夜も更けて、旅人は寝室に案内されました。寝室には寝心地のよいベッドが用意され、小さな窓からはまんまるの月が見えました。男は旅人に、おやすみなさい、と言って、寝室のドアを閉めました。

寝室で一人になった旅人は、小さな窓からまんまるの月を眺めました。そして、
「あの男は、どうしてこんな森の中で、たった一人で暮らしているんだろう。」
と思いました。旅人はなかなか寝付けず、真夜中になっても眠れず、明け方になってもまだ眠れませんでした。仕方なく旅人は、日が昇らぬうちから起き出して、台所にやってきました。昨日の親切のお礼に、今日は自分が朝ご飯の支度をしようと思ったのです。しかし、台所にはもう男がいました。そして男は、なんと、身体の半分がライオンになっていました。男は言いました。
「あんたに頼みがある。俺はじきに、身体の全部がライオンになる。そうしたら、そこのナイフで俺の首を切り取ってくれ。頼む。」
旅人は、そんな事はできない、と言いましたが、朝日が昇ると同時に男はすっかりライオンになって、旅人に襲いかかりました。旅人は慌ててナイフを握り、ライオンの首を切り取りました。するとその瞬間、ライオンはもとの男の姿に戻りました。旅人のおかげで悪い魔法が解けたのです。男は旅人にたくさんのお礼をしました。そして旅人は、また旅に出て行きましたとさ。めでたし、めでたし。

2007.10.23

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ