どこまでも、まよいみち

猫とお針子

昔々あるところに、お針子の娘がおりました。お針子の娘は、お城で、たくさんの他のお針子達と一緒に働いていました。この娘はとても腕が良く、他のお針子よりもうんと仕事ができたので、お姫さまのお召し物はいつもこの娘が縫うことになっていました。ある日、娘がお姫さまのドレスを縫っているとき、お姫さまがふらりとやってきました。お姫さまは、お針子の仕事場を覗いてみたくなったのです。他のお針子達は、お姫さまが来たので嬉しくて、皆でお姫さまのまわりに集まって、お喋りしたりお世辞を言ったりしました。しかし娘は、黙って仕事を続けていました。するとお姫さまは、娘が自分のところに来ないことに機嫌を悪くして、お部屋に帰ってしまいました。他のお針子達は、お姫さまが帰ってしまったことにたいそうがっかりして、娘をさんざん責めました。そして、悪い魔法使いに頼んで、娘を猫に変えてしまいました。

さて、お姫さまは、出来上がってきたドレスがいつもよりきれいに仕上がっていないので不思議に思い、またお針子部屋に行きました。すると、お針子達は言いました。
「いつもお姫さまのお召し物を縫っていた娘が猫になってしまったので、そのお召し物は私たちが縫ったのです。」
お姫さまは、その猫はどこへ行ったのかとお針子たちに聞きました。しかし、誰もそれを知りませんでした。お姫さまはがっかりして部屋に帰りました。困ったお針子たちは、あの娘を探して元に戻したほうがいいんじゃないかしら、と話し合いました。そして、お城の中やお城の外で猫を見かけると、片っ端からつかまえて、
「あんたはお針子の娘? そうなら返事をしてちょうだい!」
と聞きました。しかし、猫は皆
「ニャー」
としか返事ができませんでした。

お針子達は本当に困ってしまいましたが、いちばん年上のお針子が、こう言いました。
「お針子が黙っていられないような事を、して見せたらどうかしら!」
そこで皆は、めいめい自分の針を持ってお針子部屋を出ました。そして、庭の木の葉を縫い合わせてぶかぶかのスカートを作ったり、台所で野菜の皮を縫い合わせてとんがり帽子を作ったり、破いた帳簿を縫い合わせてブラウスを作ったりしました。そして皆でそれを着て、歌を歌いながらお城のまわりを楽しそうにスキップしました。すると、生け垣の奥で、かわいい笑い声がしました。皆は急いで集まって、生け垣の奥を覗きました。そこでは一匹の猫が、お針子達のスキップを見て笑っていました。皆は娘に謝って、娘を元の姿に戻しました。そして娘はお針子部屋に戻り、また以前のように、お姫さまのために素晴らしいドレスを縫い始めましたとさ。めでたし、めでたし。

2007.10.18

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ