どこまでも、まよいみち

秘密の扉

昔々あるところに、秘密の扉がありました。この扉のそばには、二人の番兵が立って、扉を守っていました。ところが、この扉の向こうに何があるのかは、誰も知りませんでした。あるとき、番兵のひとりが言いました。
「なあ、扉の右側の番兵よ。俺達はいったい何を守っているんだろう?」
すると、もうひとりの番兵も言いました。
「うん、扉の左側の番兵よ。俺達はいったい何を守っているんだろう?」
二人の番兵は相談して、扉の向こうを見てみることにしました。二人は、扉に手をかけて、力を合わせて、大きくて重い、秘密の扉を開こうとしました。しかし、扉はびくともしませんでした。つぎに二人は、秘密の扉によじのぼって、上から向こう側を見ようとしました。しかし、扉のてっぺんに手をかけると、扉の向こうで誰かが番兵の手を、ぽい、ぽい、と払いのけるので、番兵は扉のてっぺんから転げ落ちてしまいます。番兵たちは扉の向こうを見ることができませんでした。

そして、何日か経ちました。二人の番兵は、また扉の向こう側に何があるのか、気になって仕方がなくなりました。、番兵のひとりが言いました。
「なあ、扉の右側の番兵よ。俺はどうしても扉の向こうに何があるのか知りたいんだ。」
すると、もうひとりの番兵も言いました。
「うん、扉の左側の番兵よ。俺もどうしても扉の向こうに何があるのか知りたいんだ。」
二人の番兵は今度は、長い棒を持ってきました。そして一人の番兵が棒を支えて、もう一人の番兵が棒によじのぼりました。しかし、番兵がついに、扉の向こうが見えそうなくらいに上までのぼったちょうどそのとき、棒を支えていた番兵は急にぐらぐらと眠くなって、ぱたりと倒れて眠ってしまいました。そして棒もあっという間に地面に倒れて、棒をのぼっていた番兵も地面に落ちてのびてしまいました。番兵たちは、今度も扉の向こうを見ることができませんでした。

それから何日か経ったとき、王さまのお城のコックが扉の前にやってきました。コックは番兵に聞きました。
「あなたたちが、秘密の扉の番兵ですね?」
番兵たちは、そうです、と答えました。するとコックは、ポケットから胡椒の瓶を取り出しました。そして、番兵たちの鼻先めがけて胡椒をパッパッとふりました。番兵たちはたちまち鼻がむずむずしてくしゃみが止まらなくなり、目からは涙が止まらなくなりました。これでは何も見えないし、何も聞こえません。すると不思議なことに、大きな扉がすっと開きました。コックは秘密の扉の中で用事を済ませると、元通りに扉を閉めました。そしてお城に帰って行きました。番兵たちは今度も、秘密を知ることはできませんでしたとさ。

2007.10.16

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ