どこまでも、まよいみち

王様と占い師

昔々あるところに、王さまとお后さまがおりました。あるときお后さまは、たいへんかわいい男の子を生みました。王さまとお后さまは、この王子の誕生を祝って、大宴会を開きました。宴会にはたくさんの人々が招待されました。この中には、たいそう歳をとった占い師もおりました。王さまは占い師に、
「この王子の輝かしい未来を占うように」
と言いました。占い師は、水晶玉に手をかざし、王子の未来を占いました。そして、王さまに言いました。
「王子さまは、十五歳になられたとき、重い病気を召されます、しかし…」
占い師が最後まで言い終わらないうちに、王さまは怒りだしました。そして、占い師の言葉を最後まで聞こうともせずに、占い師を牢屋に入れてしまいました。牢屋に入れられた占い師は、王様に会わせてくれるよう看守に一生懸命頼みました。しかし看守は言いました。
「じゃあその前に、俺の未来を占ってみろ。」
そこで占い師は、水晶玉に手をかざして、看守の未来を占いました。そして言いました。
「じきにあんたの前歯は、風のせいで欠けるだろう。風が吹いたらすぐに立ち止まるがよい。」
すると看守は、
「風で歯が欠ける? そんな馬鹿なことがあるものか! アッハッハ!」
と笑い飛ばしました。そして看守は、昼になったので昼ご飯を食べに行きました。ちょっと用心して、パンの中にうっかり石が入っていないか気をつけながら食べました。そして、前歯を欠くことなくぶじに昼ご飯を食べ終わりました。ところが、看守が牢屋の見張りに戻る途中で、ぴゅーと風が吹きました。しかし看守は立ち止まらずに歩きました。そのとき、風で飛んできた小さなゴミが看守の目に入ってしまいました。看守は痛くて目をつぶり、その拍子に石につまづき、転んで地面に前歯をぶつけてしまいました。そして、占い師の言った通り、看守の前歯は欠けてしまいました。看守は占い師のところに戻ると言いました。
「あんたの言った通り、風が吹いて前歯が欠けてしまったよ。あんたの言った通りに、風が吹いたときすぐに立ち止まっていたら、俺は転ばなくて済んだかもしれないよ。」
それから看守はこの事を王様に報告に行き、占い師の言葉を最後まで聞いたほうが良いかもしれません、と言いました。しかし王様はそれでも怒るのをやめませんでした。

そして、十五年がたちました。占い師の言った通り、王子は重い病気になりました。どんなお医者も王子の病気を治すことはできませんでした。困った王様は、あのときの看守の言葉を思い出し、占い師に会いに牢屋へやってきました。しかし、歳をとっていた占い師は、牢屋の中でひっそりと息を引き取っていましたとさ。

2007.10.15

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ