どこまでも、まよいみち

小さなツノ

昔々ある町に、小学校がありました。この小学校には町じゅうの子どもが通っていました。子どもたちはこの学校で、いろんなことを教わっていました。後ろ向きに上手に走る方法を教わったときは、子どもたちはそれはそれは一所懸命に練習しました。そして、ついには皆が後ろ向きのままうんと遠くまで走って行けるようになりました。そして、その小学校で、後ろ向き走りの町内一周マラソン大会をするほどになりました。口を閉じたままおしゃべりをする「腹話術」を教わったときも、子どもたちはそれはそれは一所懸命に練習しました。そして、ついには皆がぴったり口を閉じたまま上手に歌を歌えるようになりました。そして、その小学校は、町内合唱コンクールに出て優勝してしまいました。それから、「手で頭をポンと叩いてツノをはやす」方法を教わったときも、子どもたちは一所懸命に練習しました。そして、ついに子どもたちは皆、自分の頭を手のひらでポンと叩いて、ちっちゃなツノをニョキッとはやすことができるようになりました。けれども今度は、町内ツノはやし大会などというものは開かれませんでした。子どもたちは、ツノをはやせるようになっても、それで何をしたら良いのか、さっぱりわかりませんでした。

あるとき、皆は学校で一生懸命に計算の問題を解いていました。すると、窓の外が急に暗くなってきました。さっきまで晴れていた空にはもくもくと灰色の雲が集まってきて、そして、ピカッと稲妻が光り、大きな雷がゴロゴロゴロッと鳴りました。そして、ざあっと激しい雨が降ってきて、地面はあっというまに水浸しになりました。子どもたちは計算をやめてキャアキャアと騒ぎ出しました。耳を塞いで怖がる子や、興奮して大声で叫ぶ子や、とにかく教室は大騒ぎになりました。すると、ドドドーンと大きな音がして、学校の屋根に雷が落ちました。そして屋根にあいた穴から、寅模様のパンツをはいたカミナリ様が落ちてきました。子どもたちも先生もこれには心底驚いて、怖くて震え上がりました。でも…

そのカミナリ様は、小さな子どもでした。頭には、ちっちゃなツノがありました。そしてその小さなカミナリ様は、大勢の人間を見てすっかり怖がって泣き出してしまいました。それを見た子どもたちは、自分の頭をポンと叩いて、ちっちゃなツノをニョキッとはやして見せました。小さなカミナリ様は、みんなの頭に、自分と同じ小さなツノがあるのを見ると、泣くのをやめました。そして、少し笑いました。子どもたちも、にっこり笑いました。小さなカミナリ様は安心して、口笛で小さな雲を呼ぶと、それに乗って、空に戻って行きましたとさ。おしまい。

2007.10.04

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ