どこまでも、まよいみち

アリのランプ

昔々ある町に、腕のいいランプ職人の男がいました。ランプ職人の男には、作れないランプはありませんでした。お客がどんなに難しい注文をしても、翌日には注文どおりのランプがきちんと出来上がっていました。だから、男は町ではちょっとした有名人でした。

ある夜、仕事を終えたランプ職人は、いつものように小さなレストランで夕食をとっていました。なじみの席と、なじみの料理と、なじみの音楽は、ランプ職人の心をほっとさせました。このレストランにいると、ランプ職人は自分の家にいるような気持ちになり、つい、食べ終わったお皿を舌でなめたりすることもありました。おいしい食事の後、お茶とお菓子を運んできた給仕が、ランプ職人にたずねました。
「ランプ職人さん、あなたはどんなに難しいランプでも作ってしまうそうですが、それは本当ですか?」
ランプ職人は言いました。
「もちろん、本当だとも。今までに私にできなかった注文はひとつもないよ。」
すると給仕は、言いました。
「それを聞いて安心しました。じつはあなたに、小さなお客様がおいでです。昼からずっと、この店であなたを待っておいでです。」
そして給仕は、店の隅に向かって合図をしました。すると、小さな小さなアリたちが、ぞろぞろと行列を作ってランプ職人のテーブルの上までやって来ました。先頭にいたアリが、ペコリとおじぎをして、ランプ職人に言いました。
「ランプ職人さん、どうか私たちに、ランプを作ってください。もし私たちにランプがあったら、夜でも外に出られます。私たちは、夜の世の中を冒険してみたいのです!」
ランプ職人は驚きました。そして、アリがランプを持ってぞろぞろと夜の道を歩いている姿を思って、なんだか楽しくなりました。ランプ職人は言いました。
「よし、承知した。明日の夜、またここへ来なさい。ランプを仕上げて持ってこよう。」
アリたちはお礼を言うと、ぞろぞろと行列を作って店を出て行きました。しかし夜道は暗く、アリたちはつまづいたり転んだりしながら、巣に帰って行きました。

ランプ職人は次の日、小さな小さなランプをたくさん作りました。そして夜になると、また小さなレストランへ出かけました。アリたちはもう、ランプ職人のなじみのテーブルで待っていました。そして、嬉しそうに小さなランプを受け取ると、何度もおじぎをして、店を出て行きました。アリたちは、暗い夜道で、美しいほのかな灯の行列になって、夜の冒険に出かけて行きました。それからランプ職人はいつものように、おいしい食事と、なじみの音楽を楽しみましたとさ。めでたし、めでたし。

2007.09.16

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ