どこまでも、まよいみち

脂身の別荘

昔々あるところに、孔雀を連れて旅をしている旅人がいました。孔雀は美しい羽を広げて、行く先々で人々を楽しませていました。人々はそのお礼に、旅人に美味しい食べ物をたっぷりふるまいました。旅人は有難くその食べ物を頂きましたが、しかし、肉の脂身だけは苦手で残していました。

ある日、旅人は深い森に迷い込んでしまいました。そしてついには道もなくなってしまいました。すると、孔雀が、旅人に言いました。
「ほら、あそこにあかりがありますよ。きっと家があるのです。行って、道を尋ねてみましょう」
旅人と孔雀は、あかりに向かって歩いてゆきました。そこには、深い森と同じ色をした大きな家がありました。旅人は扉をノックしました。すると、扉が静かに開いて、歳をとった女が出てきました。そして旅人に言いました。
「ここは、脂身の別荘だよ。道を教えて欲しかったら中に入りなさい。」
そして歳とった女は、旅人と孔雀を家の中に入れ、自分も中に入りました。家の中に入った女は、にやりと笑うと、みるみる山のように身体を太らせました。そして女は、旅人の驚いている様子を見て、くっくっ、と気味悪く笑いました。
「私は今までにあんたが捨てた脂身さ。さあ、森から出る道を教えてやろう。」
そして女は旅人に、大皿に山盛りになった肉の脂身を持ってきて、
「これを明日の朝までに全部たいらげたら、お前たちは森から出られるよ。でももし少しでも残したら、私がお前たちを食ってしまうよ。ヒヒ。」
と言うと、奥の部屋へ引っ込んでしまいました。旅人は、肉の脂身を食べ始めました。ところが脂身は食べても食べても減りません。旅人は脂身を食べ過ぎて気持ちが悪くなり、ばったりと床に倒れてしまいました。すると孔雀が、旅人の代わりに、脂身をぱくりぱくりと食べ始めました。孔雀は長いこと食べ続け、ついに、残っていた脂身を全部食べました。そして孔雀も旅人のように、気持ちが悪くなってばったりと倒れてしまいました。

次の朝、にぎやかな小鳥のさえずりで、旅人と孔雀は目をさましました。しかしそこには脂身の別荘はありませんでした。そして、旅人が少し歩くとすぐに森から出る道が見つかりました。旅人はぶじに森を出て、孔雀と一緒にまた旅を続けました。それからというもの、旅人は、ごちそうの中に脂身を見つけるとすぐにやっつけたのだそうです。めでたし、めでたし。

2007.08.19

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ