どこまでも、まよいみち

とかげのしっぽ

昔々あるところに、とかげが一匹おりました。とかげは日なたでじっとして、体を暖めていました。そして体が暖まったので、自分の家に帰ろうと、チョロロと動きました。ところが、それをいたずら猫が見ていました。いたずら猫というものは、チョロロと動くものを見ると、捕まえずにはいられないのです。いたずら猫は狙いを定め、矢のような速さでとかげに飛びかかり、鋭い爪でとかげのしっぽを捕えました。とかげはあわてて、自分のしっぽを、いたずら猫の爪の間に置き去りにして、急いで家に逃げ帰りました。そして、家の入り口に落ち葉でフタをして、いたずら猫に見つからないようにじっとしていました。そうしてじっとしているうちに、とかげのお尻からは、新しいしっぽが生えてきました。しっぽのなかったとかげは、しっぽのあるとかげになりました。

さて、いたずら猫の爪の間に置き去りにされたとかげのしっぽは、いたずら猫に叩かれたり放り投げられたりしました。そしていたずら猫はすぐにそれに飽きて、しっぽを置いてどこかへ行ってしまいました。とかげのしっぽはそこにじっとしていました。そうしてじっとしているうちに、とかげのしっぽからは、新しい体が生えてきました。とかげのしっぽは、体のあるとかげになりました。

夕方になり、日が沈みかけました。生き物は家に帰って休まなくてはなりません。体のあるとかげは、自分の家に帰ってきました。すると、家の入り口に落ち葉でフタがしてありました。体のあるとかげは
「自分はフタをしたおぼえがないのにおかしいな」
と思って、入り口をふさいでいた落ち葉をとりのけました。そして家に入りました。するとそこには、しっぽのあるとかげがいました。しっぽのあるとかげは言いました。
「おまえは誰だ? ここはおれの家だぞ。」
すると体のあるとかげは言いました。
「おれの家もここだぞ。おれのしっぽは、昼間はおまえの体にくっついていたおまえのしっぽだ。おまえのしっぽからおれが生えたんだから、おれはおまえってことだ。だから、ここはおれの家だ。おれも家の中に入れてくれ、体が冷えてしまうよ。」
しっぽのあるとかげは、からだのあるとかげを家の中に入れました。そして二匹のとかげは、一緒に暮らすことになりました。

次の朝、しっぽのあるとかげと、体のあるとかげは、そろって日なたぼっこをしておりました。暖かい日だったので、二匹のとかげの体はぽかぽかに暖まりました。そこで二匹は家に帰ろうと、そろって、チョロロ、チョロロ、と動きました。ところが、それをいたずら猫が見ていました。いたずら猫というものは、チョロロ、チョロロと動くものを見ると、捕まえずにはいられないのです。いたずら猫は狙いを定め、矢のような速さでしっぽのあるとかげに飛びかかり、鋭い爪でしっぽのあるとかげのしっぽを捕えました。しっぽのあるとかげはあわてて、自分のしっぽをいたずら猫の爪の間に置き去りにして、体のあるとかげと一緒に急いで家に逃げ帰りました。そして、家の入り口に落ち葉でフタをして、いたずら猫に見つからないようにじっとしていました。そうしてじっとしているうちに、しっぽがなくなったしっぽのあるとかげのお尻から、また新しいしっぽが生えてきました。しっぽがなくなったしっぽのあるとかげは、ふたたび、しっぽのあるとかげになりました。

さて、いたずら猫の爪の間に置き去りにされたしっぽのあるとかげのしっぽは、いたずら猫に叩かれたり放り投げられたりしました。そしていたずら猫はすぐにそれに飽きて、しっぽを置いてどこかへ行ってしまいました。しっぽのあるとかげのしっぽは、そこにじっとしていました。そうしてじっとしているうちに、しっぽのあるとかげのしっぽからは、新しい体が生えてきました。しっぽのあるとかげのしっぽは、もう一匹のからだのあるとかげになりました。

夕方になり、日が沈みかけました。生き物は家に帰って休まなくてはなりません。もう一匹の体のあるとかげは、自分の家に帰ってきました。すると、家の入り口に落ち葉でフタがしてありました。もう一匹の体のあるとかげは
「自分はフタをしたおぼえがないのにおかしいな」
と思って、入り口をふさいでいた落ち葉をとりのけました。そして家に入りました。するとそこには、しっぽのあるとかげと、体のあるとかげがいました。しっぽのあるとかげは言いました。
「おまえは誰だ? ここはおれたちの家だぞ。」
するともう一匹のからだのあるとかげは言いました。
「おれの家もここだぞ。おれのしっぽは、昼間はおまえの体にくっついていたおまえのしっぽだ。おまえのしっぽからおれが生えたんだから、おれはおまえってことだ。だから、ここはおれの家だ。おれも家の中に入れてくれ、体が冷えてしまうよ。」
しっぽのあるとかげは、もう一匹の体のあるとかげを家の中へ入れました。そして三匹のとかげは、一緒に暮らすことになりました。

次の日、しっぽのあるとかげと、体のあるとかげと、もう一匹の体のあるとかげは、三匹そろって日なたぼっこをしておりました。暖かい日だったので、三匹のとかげの体もぽかぽかに暖まりました。そこで三匹は家に帰ろうと、そろって、チョロロ、チョロロ、チョロロと動きました。ところが、それをいたずら猫が見ていました。いたずら猫というものは、チョロロ、チョロロ、チョロロと動くものを見ると、捕まえずにはいられないのです。いたずら猫は狙いを定め、矢のような速さでしっぽのあるとかげに飛びかかり、鋭い爪でしっぽのあるとかげのしっぽを捕えました。しっぽのあるとかげはあわてて、自分のしっぽを、いたずら猫の爪の間に置き去りにして、体のあるとかげともう一匹の体のあるとかげと一緒に、急いで家に逃げ帰りました。そして、家の入り口に落ち葉でフタをして、いたずら猫に見つからないようにじっとしていました。そのとき、もう一匹の体のあるとかげが、しっぽがなくなったしっぽのあるとかげに言いました。
「なあ、もう新しいしっぽを生やすのはやめたほうがいいんじゃないだろうか。こうして次々に別の『体のあるとかげ』が帰ってきたら、今に、誰が誰なのかわからなくなってしまうぞ。」
それを聞いて、しっぽのなくなったしっぽのあるとかげは、
「うん、そうだな。新しいしっぽを生やすのはやめておくよ。」
と言いました。こうしてしっぽのなくなったしっぽのあるとかげは、しっぽのないとかげになりました。

さて、いたずら猫の爪の間に置き去りにされたしっぽのあるとかげのしっぽは、いたずら猫に叩かれたり放り投げられたりしました。そして、いたずら猫は気まぐれに、そのしっぽをガジガジと食べてしまいました。その夜は、三匹のとかげの家に新しいとかげが帰ってくることはありませんでした。

次の日、三匹のとかげたちは、またそろって日なたぼっこをしていました。そしてみんなの体がぽかぽかに暖まると、家に帰るために、三匹そろってチョロロ、チョロロ、チョロロと動きました。そして、またもそれをいたずら猫が見ていました。そしていたずら猫は狙いを定め、矢のような速さで、しっぽのあるとかげだったしっぽのないとかげに飛びかかりました。しかし、昨日までしっぽのあるとかげだったとかげには、今はもうしっぽはありませんでした。ですから、いたずら猫の爪の間には何も残りませんでした。

そして次の日も、また次の日も、しっぽのないとかげはしっぽを生やしませんでした。いたずら猫は次の日もまた次の日も、とかげを捕まえることができませんでした。きっといまもどこかで、三匹のとかげたちといたずら猫が追いかけっこをしていることでしょう。めでたし、めでたし。

2006.11.21

  背景画像:フリー素材 * ヒバナ